アクティブラーニングな毎日

広い視野で生きたい。教育・グルメ・その他日々のことをつぶやきます。

筑波、行ってきました。

第17回初等社会科教育研究会のレポート

 

4年生粕谷先生の授業。

テーマは「私たちの生活と廃棄物」〜残り少ない最終処分場とごみ資源化の悩ましさ〜

 

実践のあらまし(私の解釈含む)

子どもたちは清掃工場を見学し、自分たちの家から出たごみがどのように処理されていくのかを学んだ。最終処分場を見学した時に、ごみがそのまま埋め立てられている悲惨な現状を目の当たりにし、そこから出る有毒な浸出水の問題や、そもそもスペース自体があと約50年しかもたないことを知る。そこで、「ごみをへらしていかないといけない」という課題意識を持ち、どのようにすればごみをへらしていけるのかを考えていく。大切なのは、3R、その中でもリサイクルに焦点を当てる。そうした時に東京都のリサイクル率が20%ほどなのに、77.2%と8割に迫る高いリサイクル率を誇る町が在る。それは徳島県上勝町。一体なぜ、この町は8割ものリサイクル率をほこるのか。そのひみつは・・・

 

と、いうような授業でした。

 

その後の協議会も非常に有意義で、「そうだよなぁ」と思うような意見がたくさんありました。

 

それを経て社会科の授業作り、中でも「深く考える」=思考活動を促す社会科として大切なことを再確認したので、書きたいと思います。

 

1. 子どもたちの思考の流れを断ち切らないような授業設計

授業の導入段階で行われていたことは、「ごみを減らすにはどうすればよいか」に関して意見を出すことでした。(前回から時間が空いての授業だったからというのもありますが)

こう発問された子どもたちは、「食べ残しをしないようにする」「ごみを買っている国があるので、その国に売る」「ペットボトルなどリサイクルする」など自由に発言します。

つまり、拡散的な思考でとらえていきます。

しかし、今回の本題は「(東京で)ごみをへらすためにはどうすればよいか」そのものではなく、その考えを深めるために、「リサイクル率が8割近い上勝町の事例から東京に活かせることを見つける」ということです。

と、なると、導入部で焦点化しなければいけないことは、ごみを減らす手段そのものの多様性ではなく、

「ごみを減らす手段の中でリサイクルは有効である」

「しかし、東京ではあまりリサイクルがされていない」

という2点でなければいけないと思います。

 

この2点を焦点化することで、東京に住む自分たちがあまりリサイクルできていない現状をとらえ、それをきちんとやっている上勝町ではどんな工夫があるのか?と自然に興味を持ち、調べたくなるのではないでしょうか。

 

拡散的な思考を導入で用いる場合、たくさんの意見が出てきて内容面も時間面もコントロールできなくなり、結果、無理矢理本題に入ってしまうような印象を逆に子どもに与えることになってしまうことが起きてしまいます。

どの言葉をキーワードとしてつなげていくのかをきちんと指導者側が持っておかなければ、ただ子どもたちは玉入れをさせられ、結局その玉は使われず課題提示になってしまい、子どもたちのモチベーションが下がってしまいます。

 

導入で用いる資料や発問が、そのあとの何に効いてくるのかを授業設計段階からしっかりと考え、どのようにつなげるか瞬時に反応できるようにしなければいけないですね。

 

ちなみにこの授業で課題は3つ提示され、

「どうすればごみはへらせるのか」

上勝町は77.2%の理由は」

上勝町の事例は東京に活かすことができるのか」

こうなると活動が多すぎて、子どもたちの思考もあっちいきこっちいきになってしまうと感じました。

 

2.   どれだけ自分のこととして考えられるか。

取り上げた問題として、東京都と上勝町のリサイクル率が比較されています。あえて、この環境が違う2つを比較することによって、東京都では実現できない何かが浮き彫りになってくるという意見もありました。

しかし、私はやはり、人口1600人で過疎地帯である上勝町と1000万を超える東京都を比較することに無理があるのでは、と感じました。

ただでさえ自分たちの生活を俯瞰できない生活体験に乏しい子どもたちなので、この環境が違いすぎる上勝町のことをきちんととらえられていたのかが少し疑問でした。

ただ、そういった違いがある中で、上勝町に住む人たちの努力、ごみを減らし美しい町にしようという意志の強さなどの情意面では学ぶところがあり、東京に生きる自分たちがどのように実践していけるかという部分に還元して考える価値はあると思いました。

 

上勝町の実態を学んだ後、自分たち東京では、あるいは自分たちの生活の中で、という発言があまりなかったところから、自分の課題として引き寄せられてなかったところがありました。

 

自戒ですが、日々の授業の中で教師が「いい!これは食いつくぞ!」と思うものと、子どもたちが「おもしろい!」と思うものがズレてしまうことはままあります。社会科で取りあげる教材は、子どもたち自身が「知りたい、調べてみたい!」という切実性がとても大切なので、いかに子ども目線で課題を設定できるかが大事ですよね。

 

おもしろいものに気づくアンテナ、それを子どもたちにうまく提示できる技術をしっかりと磨いていきたいと思いました。

 

社会科はやっぱり奥が深い!